2006年07月20日

NGNの現実

さて、NGNまわりでは夢物語ばかり書いてきたので、ここら辺で、現実というやつを直視したいと思います。

■NGNの姿
(注意:以下は、ネット上の情報からNTTさんのNGNをベースに、私が想像したものであり、間違っている可能性があります。また、NGNの姿は、国内外を含めて、キャリアごとに微妙に異なるようです。)

●NGNの網とは
簡単に言えば、IP化(SIP化)された既存電話網とQoSやらのサービス機能が付加された「マネージドな(管理された)インターネット網」ということになります。すなわち、もう一つインターネットを新規に構築するという非常に野心的な網となります。

●NGNへの接続
今までのISPへの接続と同じような感じになると想定されます。NTTさんであれば、Flet'sファミリーの先がNGNとなっているイメージです。(現状では、インターネット(正確にはFlet's網を経由して、ISPに接続し、インターネットと接続される)となっている。)Flet'sスクエアへの接続をイメージしてもらえれば、だいたいあっているのではないかと思います。
ただ、現行インターネット網と併存する形となるため、NGN網と現行インターネット網の間にGWが用意されることも想定されます。

●ISPの役割
基本的には、足回りが、「Flet'sファミリー」か「NGN」かという違いしかなく、ユーザは意識することはないでしょう。
ただし、NGNでは様々なサービス機能が付加されることが想定されているため、今までISPの領域であったところにNTTさんなどのキャリアさんが進出してくることが予想されます。そのため、ISPは、さらに厳しい状況にさらされることが予想されます。



■NGNの問題点
しばらく(当分?)は、NGN網と現行インターネット網が併存することになりますが、NGNサービスはNGN網へ接続している人しか恩恵を受けることが出来ません。
そうなってくると、サービスの内容にもよりますが、メトカーフの法則により、負のスパイラルに陥る可能性があります。(利用者が増えない→ネットワークの価値が上がらない のスパイラル)
すなわち、

どうやって、現行インターネット網からNGN網へ乗り換えてもらうか(orNGN網へ接続してもらうか)

という問題点が挙げられます。
そこで、ユーザに使わせたいと思わせるサービス(キラーアプリ)が一番の解決案になるかと思います。
(Flet'sへの切り替えでは「常時接続」があり、光回線への切り替えでは「IP電話」や「ファイル共有」がありました。)
現時点で見えているサービスとしては、QoSなどの帯域制御やネットワーク公正なダイナミックな変更となります。具体的なサービスとしては、「ストリーム動画がコマ落ちしない」という話になるようですが、乗り換え同期としては少々弱いように思います。
そこで、より広範囲にわたって新規サービスへの参入を促す必要があるのではないかと思いますが、ここに真の問題点があるのではないかと思います。それは、
現行インターネット網は、基本的に自由にサービスを行うことが出来るが、NGN網は、基本的にキャリアさんの所有物となるため、キャリアさんの意思が尊重される。

という点です。すなわち、NGNキャリアさんの顔色をうかがいながらサービスを行う必要があるということです。このような状態では、本気で参入する人たちが現れるか非常に不安であります。
特に、現行インターネット網が普及する推進力となったベンチャー企業の参入があまり期待できない可能性があり、これは、キラーアプリの登場確率に大きな影響があるのではないかと思います。



■NGNの普及に向けて
NTTの和田社長さんは、総務省NGNの設備に開放義務に下記のような発言をしています。

「『NGNの開放義務化』と言われても意味が分からない。NGNの構築についてはロードマップを公開し,上位レイヤーのアプリケーションやコンテンツ,端末などの接続条件も開示していくと我々は言ってきた。それ以上求められることはあるのだろうか」と疑問を呈した上で,「コスト割れでも設備を貸し出さなければならない義務や,我々の企業価値が下がる形での開放義務なら受け入れられない」

接続条件も開示していくとのことですので、こちらの情報をきっちり開示していただき、一切の不安なく参入できる体制を整えてもらい、参入障壁を極力低くしていただきたいと思います。
理想的には、今までのように、キャリアさんには、足回り(土管部分)のみのサービス提供をしていただくのがよいかと思いますが、NGN網の構築という多大な投資をする以上そうは行かないと思いますので、健全な競争が出来る環境を整えてもらえればと切に願います。



■最後に。
実は、この手のマネージドネットワークが検討されたのは、今回が初めてではないようです。その昔、ISPも似たようなことを考えていたことがあったようです。
なぜ、ISP版のNGNもどきが、日の目を見ることがなかったかは解りませんが、このあたりの理由にNGNの行く末の解の一つがあるのかもしれません。

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